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FEATURE STORY > シルク製品誕生秘話
川俣シルクとは

みちのくの玄関口である福島県は、磐梯山・猪苗代湖をはじめとする自然景観の美しさは言うに及ばず日本有数の絹織物の産地として知られています。特に、吾妻・安達太良山の麓に広がる信夫地方(福島市中心)、そして川俣羽二重で名を馳せたる伊達地方(川俣町・飯野町(現在は福島市)中心)は、古来から養蚕・機織業が非常に盛んな土地でした。強固な屏風のように左右に連なる奥羽山脈は、桑の育成に最も適した気候風土であり、純白な輝きと光沢をもつ絹とともに「東洋一のシルク」といわれた川俣シルクが生まれるべくして誕生したといえます。

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川俣町シルクピア おりもの展示館

1400年前より伝わる匠の技

川俣の養蚕・絹織物は、史誌の伝えるところによると、今からおよそ1400年前、崇峻天皇の妃であった小手姫が、蘇我馬子に故郷大和を追われた皇子を探しもとめてこの川俣に辿りつき、桑を植え養蚕を行い、糸をつむぎ、機織の技術を伝承しました。この時から、絹は川俣の物産として各地に広がり、楯絹の名声は、全国に波及していきました。

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小手姫像(川俣町中央公園)
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“妖精の羽”の名前を持つ世界一薄い絹織物
「フェアリー・フェザー」

まるで空気の衣をまとったような軽さ。民話に伝わる天女の羽衣はこんな生地だったのではないでしょうか。これは世界一薄くてしなやかな先染絹織物「フェアリー・フェザー(妖精の羽)」です。髪の毛の太さ(約50デニール)の約6分の1(8デニール)という超極細絹糸が使われております。

織機のたて糸に何千本も超極細絹糸をセットして織り上げたオーガンジー(極薄手で透ける平織りの生地)は、手に取ってもまったく質量を感じさせないほど軽い。それなのに、細い生糸のもつ柔らかさが、やさしく、そして確かに、肌を包みこみます。

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妖精の羽(フェアリーフェザー)

「ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞」「グッドデザイン賞」を受賞

フェアリー・フェザーは単に世界一薄い絹織物というだけでなく、機械による量産化を実現させた技術が高く評価され、2012年の「ものづくり日本大賞」で最優秀賞の「内閣総理大臣賞」、「グッドデザイン賞」の2つを受賞。海外の製品に押されがちな日本の繊維産業の中で、品質で世界に勝負できる製品として話題を集めました。

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2012年 ものづくり日本大賞受賞
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グッドデザイン賞受賞

4年の歳月をかけて商品化に成功

「世界一薄い絹織物」の開発から販売までには、4年の歳月をかけて研究開発を続けました。原料となる繭(まゆ)も特別な物を使用しました。普通、繭は蚕が4回脱皮を繰り返して作ったものを使用するのですが、フェアリー・フェザーに使うのは「三眠蚕(さんみんさん)」と呼ばれる繭糸。3回しか脱皮をしていない蚕の繭はまだ小さい。そのために糸もクモの糸のように細くしなやかです。

弊社がなぜ、他社が二の足を踏む超極細生糸にあえて手を出したのか。それは、いまファッション業界では薄くて軽い生地の人気がとても高いということです。それに加え30年来のお付き合いがあるウェディングドレス・デザイナーの第一人者である桂由美氏の『新婦の体に負担がかからないような軽いウェディングドレスを作って、ダンスを軽やかに踊れるようにしてあげたい』という言葉がヒントになっております。

三眠蚕の極細の糸でも、機械織りで大量に生産でき、しかも、機械で超極細糸を激しく織っても糸切れや毛羽立ちを起こさないようにするために織機に独自の改良を重ねました。その結果、糸のテンションの管理を厳密にすることで、フェアリー・フェザーの商品化に成功したのです。

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桂由美氏のウエディングドレス
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